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Research Projects

研究プロジェクト

1.災害時都市活動支援のためのsoftware2.0型シミュレータの開発 / Development of Software 2.0-style Activity Demand Simulator for a post-disaster situation

年活動・生産活動の毀損

傷ついた都市が回復する中で

左側2枚の写真は、1995年の阪神淡路大震災発生後の加古川線,代行バスの様子を写した写真です。右側の写真は、2018年の西日本豪雨発生後の呉ー広島間を結ぶ代行バスを写した写真です。ポケベルの時代.電子メールもほとんど使われていなかった時代から,スマホの時代に移り,情報技術は長足の進歩を遂げたと思います.翻って、都市や交通のインフラは、この30年でいかに進化したでしょうか.情報通信技術の進化に比べれば,その進化は足りておらず、まだまだ発展を見込めるのではないか.そんな研究背景から、この研究プロジェクトに取り組み始めました。

この研究プロジェクトでは,災害復旧期にフォーカスをしています.短い時間で過ぎ去ってしまう事象だからか,これまで、災害復旧期の都市活動・交通行動はあまり注目されてきませんでした。ただ、この短い復旧期の間で、住民と行政・実業・アカデミアと信頼関係が構築されれば,その後の復興・都市再生にも大きく貢献するでしょうし、逆もまた然りだと思います。また、現実的には、都市において人の活動の回復のほうが、インフラの回復よりも早く、回復速度の差が、復旧期・復興期における都市活動・生産活動を毀損しているとさえ、言えます。

災害復旧期の混乱を最小限にするためにいかに備えることができるか。起きる前に備えることは、不確実性が非常に高く、難しい.より想像力を働かせて,高度な技術をもって備えなければならない.災害復旧期という非定常な時期だからこそ,新しい技術が介在し、影響を発揮する余地が大きいと思っています。

災害復旧期に、人がどう動いているのか?

災害復旧期の都市活動を支えるために、都市交通のインフラを供給さえすればいいという単純な話ではありません.災害復旧期は,働ける人や利用できるモノ・エネルギーに制限があって,臨時の代行バスの供給量も制約があります.平時に近い通勤・通学といった活動をすぐに始められる人もいますが、日々の生活・復旧のための活動に集中しなければならない人も多いです。どう人が動くのかにあわせて、効率的に活動・移動を支える都市インフラを提供する必要があります。

では、そのために何が必要なのか。なぜ、研究や対策が進められてこなかったのか。
 第一に、そもそも何が起きているのかを知ることが難しかった、ということがあります。阪神淡路大震災のころは、人の動きを知るためにはアンケート調査をするしかありませんでしたが、災害復旧期のような混乱した状況でアンケート調査することは難しい。現代は、Big-Dataにより、スマホや車両のGPSログから移動履歴を知ることができます。もちろん、Big-Dataも、本当に即座に情報提供できるわけではなく、観測から少し時間をあけて、行政などの意思決定者の目に触れることになります。その点では、災害復旧期において、少し前の活動需要を知ることができる時代になったといえます。
 一方、災害復旧期において効果的な対策を行うには、未来を知る技術が必要です。未来を知ることで、生じうる状況に対して、有効な対策を施せます。その未来を知るための技術開発として、本プロジェクトでは、災害復旧期の都市活動・交通のシミュレータの開発に取り組んでいます。特に、現実的な施策実施には、シミュレーションの精度向上が必須であり、Big-Dataから得た(少し前の)都市状態をインプットし、さらに、シミュレーションモデルも刷新していくことを目指しています。

臨時都市インフラによる活動支援

需要予測の高精度化で果たすこと

需要予測の高精度化で果たすこと

シミュレータの研究開発により、災害復旧期の都市活動・行動の需要予測の高精度化を果たすことで、どのように都市・社会に貢献することができるでしょうか? どのように運用するかの判断が難しい臨時交通網のマイクロネットワークデザイン、つまり代行バスのネットワーク形成に貢献できるでしょう。また、仮設住宅や救援物流拠点も都市活動と関わりが深く、その配置にも貢献できるでしょう。臨時的な都市インフラを適切に運用することで、インフラの回復を早め、人の活動の回復との差を最小限にとどめることができると思います。

ちょっとした空間配置の違いが行動選択に影響を与えやすいバス網や救援物資拠点といった施設の検討を行うために、行動規範・空間解像度・時間解像度をより緻密に記述していく必要があります。

計画論ではなく、都市マネジメントの基礎技術開発→眼見えないことを都市インフラに適用する時代へ

本プロジェクトは、リアルタイムな運用を目指したシミュレータ開発であり、単に、計画シナリオのシミュレーション比較を行うのではなく、(リアルタイムな)都市マネジメントのための基盤技術開発だと思っています。数多くの観測を用い、無数の施策候補をシミュレータ内で検討することができれば、実際に”眼”でみて計画を決めていた時代から、”眼”で見えないことを都市のインフラ・計画に適用する時代へと一歩進めることができるだろうと期待しています。

研究の全体像・将来展望

研究の全体像・将来展望の詳細

最後に、研究プロジェクトの全体像と将来展望を説明します。 まず、観測データはリアルタイムで有効に活用できるすることを目指し、都市活動・交通シミュレーション内の要素技術として、(A)Software2.0志向の行動モデル更新、(B)モデルパラメータのリアルタイム更新の二つの技術を研究・開発します。(A)は高自由度下のモデル探索を可能とし、(A)は推定技術の精度・頑健性向上に寄与し、行動予測の高精度化に貢献します。またシミュレータの計算結果を(C)臨時交通網の最適デザインに生かすことで、実際の災害被害軽減に貢献し、こうした革新技術を社会に浸透させる道を啓いていきたいと思っています。

なお、当研究プロジェクトは、JSTの創発的研究支援事業の支援を受けて推進しております。また、創発的研究支援事業においては、博士後期学生支援のRA(リサーチ・アシスタント)雇用を推奨しています。興味ある方は、浦田まで連絡ください。